Nebosukeの引籠り部屋

日常で思ったことを気ままに書いてる”ボヤきブログ”です。

守護猫

動物が大好きな母は、ペットショップは天職だと、毎日仕事が楽しそうだった。
車が大好きだった父は、仕事車のダンプも自家用車も、時間をかけて自分好みにカスタマイズをしていた。でもボクが麻痺になってからは母は退職し、父は夜勤のない仕事へ転職し、自家用車も大きなワゴンタイプに買い替えた。

親だからと子の犠牲になる必要なんてない。自分の幸せを考えても良いのに、両親に自分の「楽しい」を捨てさせてしまったんだと、ボクの心は罪悪感でいっぱいだった。

どこに行っても、誰からも「欠陥品」と疎まれるボク。
ボクがこの世から消えれば、両親も楽になるのではないだろうか。
もういっそのこと、消えてしまいたい。
人生を歩むことを諦めたボクは、毎日消える事を考えていた。

精神的にも肉体的にも弱っていたから、見えざるものに付け込まれたのだろう。
ある夏の晩、酷い金縛りにあった。
どうしても呼吸ができない。全身麻痺しているくせになぜか全身痺れて痙攣しているのがはっきりわかった。足にヒヤッとした何かが絡まり、物凄い力で掴まれている感覚もあった。
足元側は壁なのに黒い何かがいる。「怖い。助けて。」そう叫びたくても声がでない。
全身の力が抜けていくような感じがしたとき、お腹の上に知っている温もりがふわっと乗っかってきて、足元に向かって「にゃーん」と鳴いた途端、黒い物体は消えた。
「はあ"ぁ"ぁ"」と呼吸が吸え体が動いた。お腹の上の温もりは「チリーン」と首輪の鈴を鳴らしながらボクの顔の横で蹲った。

ボクを金縛りから救ったのは、姉妹同然に育ってきた21歳の時に他界した、飼い猫だった。

あの子は死ぬ直前まで病気と闘って余命より1年長く生きて、19年と11か月の大往生で逝ってしまった。
生きようとしないボクが心配できたのか、それとも叱りにきたのかはわからないけれど、確かに感じたあの重さと温もりは間違いなく、ボクの大切なあの子だった。

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